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脱兎のごとく



第二部


『ピィーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!』
「ぇ?!」
鬼たちもそうだが、僕と瞬兵はお互い顔を見合わせる。
「ね?だから大丈夫って言ったでしょ?」
そう言いながら笛を口に運ぶと・・・。
『ピューーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!』
春歌もそれを吹き、辺りに音を響かせる。
「まあ・・・助かったんだよな?」
瞬兵が情けない声を出す。
『そんなぁ〜』
鬼の三人は信じられないといた表情だ。
「ま・・・・ラッキーだったな」
僕も笛を口に運ぶ、それに習い他の4人も笛を用意し強く吹く。
お昼の時間だ。



「あー怖かった」
「まあねー、連中が屋上に来るのがもう少し遅かったら捕まってたもんね」
お昼が終わると、僕と春歌は校内に逃げ込んだ。
「で、一番逃げ回りやすくて罠が比較的安全な場所だっけ?」
「そーだよ、僕たちを追っかける連中から逃げれるにはその方がいい」
「わかった、付いてきて」
そういうと春歌は、1階の窓から身を乗り出し体育館の方へと向かう。
「どこに向かうんだ?」
あとに続きつつ聞いてみる。
「プール、今は水入ってないから広いし、通り道は罠だらけ」
「ういうい」
「あ、そこ危ない、しゃがんで」
反射的に身をかがめる。
ちょうど頭の上、髪の毛が触るか触らないか位のところに細い糸が見える。
「・・・」
「ちなみに触ると、左側の倉庫から石灰の塊が飛んでくる仕掛けね♪」
怖いなぁ。
「んじゃ急ごう」
あと6秒で鬼たちが動き出す。
『ピューーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!』
「あ、動き出したね」
「うん、で、どこに隠れるの?」
「更衣室の横のフェンスのところ」
「外なんだ?」
「うん、逃げ回りやすいように、ほんとは女子更衣室がいいんだけど・・・」
「やだ」
「でしょ?」
「っと・・・伏せろ」
「ぇ?」
春歌の頭を無理やりねじ込め、外の気配をうかがう。
「弘樹か・・・また目立つところにいやがって」
「弘樹くん?」
「ああ、向こうもこっちに気づいてる」
弘樹はこっちに顔を向けると・・・微笑む。
「囮になってくれるみたいだね」
「え?そーなの?」
「うん、目がそう言ってる」
「なんでわかるのよー」
「『お守り大変だろ、少し手伝ってやるよ』って」
「そんなこと言ってないでしょー!」
「いや、足で・・」
僕と弘樹はオリジナルモールス信号で会話出来る。
コレで僕と弘樹は常にテストでの好成績ををキープし続けていたのだ。
よい子は真似しちゃいけないぞぅ。
「わかんないわよ」
「まぁ・・・そんなことより、ありがたいでしょ」
僕もトントンと指で壁を叩き合図を送る。
「なんて言ったの?」
「さっきの罠の場所を二、三個教えておいた」
「ふーん」
「あと、軽く感謝」
「お・・・さっそくおいでなすったな」
この足音は・・・歩幅の感覚、すべて揃ってるってことは・・・。
『ふ・た・ご・は・ま・か・せ・ろ』
「気づいてるか、んじゃもーちょい身を潜めてよ」
「何?どしたの?」
「双子が来る、けどまあ弘樹がなんとかするでしょ」
「そうなんだ?」
「そう言ってる」
程なく双子を目視できる範囲に捕らえる。
「よお!真一!!恵子!!お前らの足で俺についてこれるか!!?」
『なにを!!?弘樹!!いい気になるんじゃないぞ!』
「試して・・・みろ!」
そういうとチーターの瞬発力で一気に駆け出す。
『逃がすかぁ!!』
双子もそれに続く。
「・・・行ったね」
春歌がつぶやく。
「・・・・いいや、まだだ」
「その通〜〜〜り!」
真一が飛び掛ってくる。
僕は手短にあった春歌の罠の糸を切る。
がらららららららら・・・・。
ひゅっ!!音と共に真一に石のつぶてが襲い掛かる!
「あぶな!!」
真一が下がる。
「こっちだ!!!」
僕は春歌の手を引くと走る!弘樹の奴つかえねぇ!!!
「待てぇ!!」
真一は食い下がってくる。
「しつこい!」
「当たり前だ!!」
春歌の罠が再び真一を襲う。
真一はそのつど、後ろに下がり、しゃがみ、逃げ回る。
少しずつだが、僕たちの距離が開いてきた。
「はい、いらっしゃーい!」
「な・・・・!?恵子!!?」
そう、おそらく弘樹を追うと見せかけて回り込んでいたのだろう。
「・・・彰君」
その瞬間、春歌の手が僕の手からするりとこぼれたのだった。




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