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序章 〜クラウド、教授に呼び出される〜





「じー」
クラウドは見つけた
「おっちゃん・・・これ、なに?」
とある雑貨屋での出来事だった
この『学術都市パッフェルベル』で、比較的利用者の多い雑貨屋だ。
その品揃えは日用品からサバイバル道具まで多種多様である。
「それはなぁ、なんだっけかな・・・あーそーだそーだ『ポーション』だ『ポーション』そこの学院の生徒がたくさん作ったからってよこしてきたんだったな」
「錬金術かぁ、なあなあおっちゃん!こっちはなんだ?!このキラキラしたやつ!!」
今度は別の商品に目がいく、まだ幼いクラウドには摩訶不思議の世界
「そいつは・・・その、なんだ確か錬金術の・・・」
「また錬金術か!?すごいなぁこんなモノまであるのか!」
そう言いながらも、ソレが何なのか何に使うものなのかはまったくわかっていないクラウドであった
「ある、というより作るが正解だな」
クラウドがわしづかみしていた商品を取り上げ、棚に戻す
「確かに物を作るっていうのは大した技術だ」
うんうん、と雑貨屋の主人は満足するように頷く
「あそこの生徒は問題も多く起こすが、その分技術もしっかりしている奴が多い。この街が学術都市と呼ばれるゆえんは、その技術力の高さがあるからなんだなぁ」
リッツは窓から見える『パッフェルベル錬金術学院』に向かい、また大きく頷いた。
「そっかぁ・・・すっげーんだなぁ」
クラウドは横に並ぶと、くーっと身震いをする。
「それじゃあおっちゃん!あたしはもう帰るっまたねっ」
「あぁ・・・気をつけて帰るんだよ?」
クラウドは元気に手を振ると、買い物籠を手に持って元気に家路に着いた



「ふー、終わった終わったぁ」
それから数年後、クラウドは錬金術学院に通っていた
「実習は楽しいのに、授業となるとこー・・・睡魔がねえ」
そう言いながら肩口から腕を振り回すクラウド
「あんたの場合、実習でもまじめに受けてるとは思えないけどね」
「そーそー、この間の野外実習でも一人歩き回って迷子になるし」
「うるさいわねー、まじめと楽しいは違うでしょー」
「顔立ちはいいし、スタイルもそこそこなのに・・・勿体無いわよね」
そう言ってクラウドを嘗め回すように2人の同級生が視線を送る
赤く、短く揃えられた髪に大きい瞳。若干小柄だがクラウドは十分に魅力的であるといえよう
「この間お風呂に入った時もさ、結構出てるところは出てるのよねぇ」
うひひ、と指をくねらせながら一人がクラウドに近づいていく
「いやー、ちょっと・・・その手と目は何かなー・・・あはははは」
身の危険を感じながら、半歩ほど下がるクラウド
「クラウド、ちょっといいかしら?」
そんな漫才のさなか、突然後ろから女性の声
「はい・・・教授?」
振り向いてみると、そこには先ほどまで講義をしていてくれていた“ラーレイン教授”の姿
「私の研究室までいらっしゃい、話すことがあります」
「は、はい」
顔を見合す同級生を尻目に、教授の後をついていくクラウドであった



「あの・・・教授?」
研究室まで通されたクラウド、気持ち表情が硬い
「ふふ、なんで呼ばれたのかが良く分かってないようね?」
「え、えっとー・・・・」
(思い当たる節とすれば・・・この間割ったビーカーとか、虫除け作ったつもりが虫の成長促進剤だったとか・・・この間の爆発はもう怒られたし実習のときの迷子もなんとかなったし・・・)
「硬くならなくていいわよ?お紅茶でも用意しましょうか?」
「あ、そんな・・・」
(それとも、チーズ作ろうとしたらブルーチーズも真っ青な色になったことか・・・それとも酒のことかな・・・でもあれは)
などと頭の中で色々と巡らせる
「さあ座って座って、私の焼いたクッキーもあるのよ?遠慮しないで食べていってね♪」
(♪ってなによもー!なんでにこやかに、怖い・・・怖いよー)
「あの、せんせい」
言われるがままソファに腰掛けるクラウド、なんとか質問をしようと言葉をやっと発した
「はぁい?」
ティーカップを暖めながら首だけ少しこちらを向ける教授
「あの・・・あたし、また何かご迷惑なことを・・・かけてしまいましたでしょうか?」
動揺しているせいか言葉がことさらおかしい
「あら?あなたまた何かしでかしたの?」
「や、えーっと・・・もー大体怒られ済みなことしか心当たりが無くて・・・その」
「その?」
「この間の授業でやった植物用の肥料の調合ですか?そのとき教材か何か駄目にしちゃいました?!さっきの授業では居眠りしてなかったですが、ちょっとボーっとしちゃったときもあったかもしれませんけど、その・・・あああ!!!まさか図書館で借りてた本のことですか!!それとも・・えーっと、えーっと」
ごめんなさい、ごめんなさいっとパニック気味に頭を上下に振りながらクラウドはまくし立てていた
「あなたのそういう性格はかわいらしいですが、術士としてはもっと冷静にならないといけませんねぇ」
ふう、とため息を一つラーレイン教授は紅茶のカップを机にならべ、葉を煎じ湯を流し込む。
「ふぃー、ごめんなさいです・・・」
「まあ飲んで、落ち着くわよ?」
そういうと、紅茶をクラウドの前に滑らせる
「・・・いただきます」
クラウドは勧められるがままに紅茶を口元に運ぶ。
「・・・いい香りの紅茶ですね・・・」
その香りで少し落ち着いたのか口に含む前にもう一度香り、ゆっくりと紅茶を一口味わう
「ええ、そのお紅茶は特別なのよ?毎日水やりは欠かさず適量で、光の加減も気をつけてね」
「今年の初めの実習で、先生が教えてくれましたよね?生き物は平等にデリケートだって」
「えぇ、そうよ?それにこの子は肥料も特別製なのよ?」
そう言って教授は立ち上がると、窓辺から何かを持ち上げる
「ふふふ、この鉢植え覚えてる?実習であなたが作ったハーブなのよ?」
「あ!ボラスキニフっ!!先生が預かってくださってたんですか?」
「ぶらす・・・何?」
「この子の名前ですよー、ボラスキニフ=レイ=リチャード3世が正式名称です」
そう言いながらハーブの生えた鉢植えを手元に引き寄せる
「えっと、もしかして・・・?」
「ええ、美味しいでしょ?」
「ボ・・・ボルナレフ・・・・あんたの死は無駄にしないわっ」
がしっ、と鉢植えを抱きしめるクラウド
「死んでないわよ」
笑いながら教授が一言
「こんなに美味しくなって・・・うんうん、お母さんはうれしいぞぅ」
頬擦りしながら鉢植えを持ち上げる
「まあ、感動の再開はそのくらいにして」
話が進まなそうなので、鉢植えを取り上げる教授。
「ああ・・・ボルナレフぅ」
「あとで返してあげますよ・・・それでですね、本題に入らせていただきます」
こほんっと咳払いをすると、教授は鉢植えを足元に置き、クラウドを凝視する
「アシッド・クラウド生徒、あなたに卒業試験の内容を説明いたします」
・・・・・
「ぇ?」
少しの沈黙の後に、クラウドの喉の奥から小さな音がでる
「卒業試験よ。この肥料を作った技量もそうですけれどあなたは当学院で学ぶべきものの大半を収めた、私がそう判断いたしました」
「えーっと・・・」
クラウドの頭がこんがらがっている
「まあ、難しく考えないで。私が言う課題をクリアしたら卒業、錬金術師として生計をたてれるようになるのよ?」
「あ・・・はいっ、よろしくお願いします!」
事態をしっかり把握できるようになったようだ

「あなたの卒業のための課題はこれよ。
 素材は何を使ってもかまわないわ。
 材料を集めるのは他の人に手伝ってもらってもかまわない。
 ただし、最後の調合だけは自分でやること、いいわね?
 がんばってちょうだい」
                   (パッフェベルの鐘、本編より引用)

「はいっ!がんばりますっ」
クラウドは椅子から立ち上がり、気をつけの姿勢を決める
「あ・・・でもその前に、クッキーも頂いていきます」
また椅子に座ると、今度はにこやかに教授と会話を始めるのであった



「ポーションかぁ・・・実習で習った時は材料は学院のだったからなぁ」
ホーム戻ったクラウドは、早速試験のことを考え出した
「よしっ、材料を取りにいきますかっ」
そう言うと、色々とクローゼットから引きずり出し始める
「えーっと、まずブーツにマントに・・・あとはーあれどこにやったっけかなー」
そういうと、ごそごそと机の引き出しを漁る
「あった!」
出したのは1本の短剣
「ウェルナには感謝しないとね」
学院で出会ったエルフの青年を思い出す
「そういえば体も鍛えなさいとかいってたわね、若干エロい目で」
材料集めは街の外、錬金術師は体力も大事なのである
・・・・このエルフの青年は目的が違うかもしれないが
「ふんだ、一人前になったらまず痩せれる薬を作ってやるんだから」
その時のことを思い出したのか、若干ご機嫌斜めに剣を片手で振る
「む、ちょっと重いな。両手で扱おう」
地味だが実用的に、学院の制服から動きやすい格好に着替える。剣も腰に装着
「これでよし、さあ早速材料集めからスタートよっ」
そう一言、クラウドは街を後にするのであった



序章:完

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