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吸血鬼のやつ(仮)



その4


「・・・ここ・・・です」
双葉を抱えた雪奈がデパートの上空に到着。
「さっきのあれ、出来ますか?」
「さっきのって、結界?」
「はい」
「うん、任せて」
双葉は袖からまたお札を取り出す。
今度は4枚取り出しデパートの屋上の端、四方へと飛ばして結界を作り出した。
「OK,出来たわ」
その瞬間、双葉の携帯がなりだした。
「さすがエイリーン、早いわね」
「吸血鬼は・・・上に向かってきてますね・・・あ・・・」
「そなの?・・・あ、もしもし・・・うん・・・あたしは屋上・・・じゃあ3Fで合流ね」
電話でエイリーン・・・リンと話をし、集合場所を決定。
「ごめん、下ろして。3Fで仲間と落ち合う」
「3Fですね」
両手で双葉を抱きかかえていたが、それを片手にし腰を抑える。
「え?」
突然不安定な体勢になった双葉は慌てて両手を雪奈の首に回した。
そしてそのままデパートの側面へと回りこむ。
「ちょっと、上からのが早いんじゃ・・・」
「ダメ、上には吸血鬼が向かってきてる・・・雛森さん美味しそうな匂いするから危ないよ」
「美味しそうって・・・」
「・・・噛まないよ?」
話してる最中にも重力にそった自由落下で3Fの壁の横で止まる。
「窓とかはなさそうね・・・」
「大丈夫」
本日何度目かの『大丈夫』という単語を口にすると、雪奈は外壁を思いっきり殴りつける。
どごっ!
ばらばらばら・・・・!
雪奈の1撃で壁に大きな穴が開き、そこから進入。床に足をおろすと、双葉を開放する。
「すごい・・・」
振り返り、雪奈の顔を見つめる。しかし雪奈の顔ははるか上を向いていた。
「・・・まだ生きている人がいます」
「え?」
「ちょっと!双葉ちゃん!」
「リン!ラザド!」
「おせーぞ双葉!早く援護してくれ!」
そう言うラザドの後ろには、10体ほどゾンビが迫ってきている。
「おおおおおおおおおお!」
ラザドの両腕が巨大化、着ていたパーカーの袖を破るとそこには狼の体毛に覆われた巨大な腕が生まれた!
「彼の者に太陽と炎の加護を!炎神降宿!」
双葉からお札がラザドに飛ぶと、その巨大な爪が光を放ちだす。
「いよっしゃあああああああああ!」
咆哮と共にゾンビ集団へと襲い掛かると、まるでバターでも切るようにゾンビの体を切り裂く!
「・・・もう大丈夫そうですね」
雪奈は一言つぶやくと、上空へと再び体を躍らせる。
「え?ちょっとこの子・・・」
「近衛さん!?どこいくの!?」
「まだ生きてる人が何人もいます、助けてきます」
雪奈は2つ上の階の壁まで進むと、再び壁に穴を開ける。
「何あの子・・・ちょっと、ラザドのサポートお願い!私はあの子と行くわ!」
リンが横穴から顔を覗かせると、背中から服を破り蝙蝠のような形の巨大な翼が生まれる。
「待ちなさい!えーっと・・・そこの子!」
そのままリンは雪奈を追うと、5階の穴へと向かうのであった。



「・・・いた」
この騒動が終わってからゆっくりと食するつもりだったのだろう、そこには6名の子供が呆けた表情で佇んでいた。
「ちょっと!お嬢ちゃん!あんた・・・」
「えっと、お姉さん」
「何よ?」
「この子達の暗示・・・解けますか?」
「・・・ちょっと待って」
リンは子供の一人に頭に手を置くと、少し目を瞑る。
「うん、解けないこともないけど・・・下手に暴れられても困るわね。それに時間もかかるわ」
「そうですか」
「あなたは・・・吸血鬼なの?」
「よくわかんないですけど・・・たぶんそうです」
「たぶんって・・・・」
「吸血鬼なのは確かなんですけど・・・死んでないんですよね、体が」
「死んでないって・・・」
「わたしが運びますので下で暗示の解除をお願いします」
話を打ち切るように、雪奈が歩いて子供服売り場の試着室の中へと入っていく。
「ちょっと、どうする気よ!?」
かちゃ・・・・ぞぞぞぞぞ・・・。
試着室の中から赤い霧が生まれる。
「何これ・・・血?」
『付いてきてください』
雪奈の声がとことなく響き渡る。
「え、ええ・・・」
赤い霧が子供達の体を包み込むと、そのまま持ち上げた。
『下まで行きます』
先ほど空けた穴からその霧は外へと、子供達を含んだまま向かう。
「ちょっと!結界に気をつけなさいよ!」
『はい』
結界とデパートの間に子供達を下ろすと、霧状のまままっすぐ上へと戻ってくる。
そのまま先ほどの試着室まで戻ってくると、手早く服を着なおしてリンの前へと戻ってきた。
「すごいのね」
「・・・ありがとうございます、でも体しか変えられないから服が・・・その」
肉体なら霧状へと変えれるだが、服は別らしい。
「あんまりやりたくないです・・・それより暗示の解除を」
「下の階のゾンビは片付けながらあがってきたから平気、それより吸血鬼本人を探して退治しちゃわないと」
「それなら・・・この上の階にいます」
「わかるの?」
「はい、同属ですから気配でなんとなく」
そう言うと、今度はエスカレーターに向かう。
「ああもう、勝手にいかないでよ!」
「あ、ごめんなさい」
雪奈は少し待つと、今度は二人並んで歩くのであった。




その5

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