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吸血鬼のやつ(仮)



その1


「こんな夜道に一人で出歩くとあぶないよ?お嬢ちゃん」
「え?」
「こんな夜には、色々と出るからね」
「はぁ・・・」
男は月を仰ぎ見ると、ゆっくりと少女に歩み寄る。
少女は男の顔を見つめる、男の瞳がその瞬間金色に光り輝いた。
「ぇ・・・うごけな・・・」
「当然だ、私の目を見てしまったのだからな」
男は悠然とその少女に近寄ると、首筋に顔を近づける。
「んーん、いい香りだ。やはり口にするなら乙女に限る」
「・・・やめて・・・ください」
「断る」
男は短く答えると、口を大きく広げ少女の首筋にその鋭い牙を突き刺したのであった。
「あ・・・あ・・・・・」
悲鳴にならない悲鳴をあげ、少女はその場に倒れるのであった。



「・・・あの」
黒い、短髪の少女が学友に声をかける。
「ん?どしたの近衛さん」
「・・・昨日の深夜の・・・『へろへろがってん』録画しました?」
「したしたー、おんもしろかったよー」
「・・・今度貸してもらってもいい?」
「それなら見においでよー、今日あいてる?」
「いいの?」
「うん」
「じゃあ・・・お願い」
「でも珍しいね?いつも見てるのに」
「なんか昨日、体が重くって・・・すぐ寝ちゃった」
「そなんだ?大丈夫?」
「だいじょうぶ、いく」
少女は、近衛と呼ばれた少女は自分の首筋を少し撫でる。
「・・・うん、へいき」
「近衛、ちょっと職員室いいか?」
「はい」
突然の呼び出しを受けて近衛は先生についていく。



「近衛雪奈さんですね?」
「はい」
職員室の来賓室には、2人のスーツの男女が待っていた。
一人は、白髪にメガネをかけた青年。年のころは20前後といったところか、鋭い視線を雪奈へ向けている。
もう一人は女性、年齢の頃は20半ばといったところか。妖艶な印象を持った青く、長い髪を持った女性だ。
「・・・あの・・・なんでしょうか?」
雪奈が不安な声をあげる。
「座って、お嬢さん」
女性が口を開く。
「はい」
わけも分からず、とりあえず着席。
「昨日の晩のこと、話してもらってもいい?」
「昨日の・・・夜ですか?」
なんとなく雪奈は自分の首筋に手をおく。
その行動に二人が緊張する。
「んと、まっすぐ家に帰りましたけど。・・・テレビ見てお風呂入って、それだけです」
「私達はね、昨日の帰り道にあったことを聞きたいの」
「・・・何かありましたっけ?」
「帰り道で、何か無かった?」
「帰りみち・・・」
雪奈は視線を床に落とす。
「そういえば・・・」
「そういえば?」
ごくり、と対峙している二人の喉がなった。
「・・・・・昨日・・・スーパー寄るの忘れたから卵が無かったです」
一瞬の緊張が一気に緩んだ。
「そーいうことじゃねえよ!」
沈黙を守っていた白髪の男が声をあげる。
「昨日の晩!お前血を吸われてるだろ!吸血鬼に!!」
「・・・・・・・・はい?」
「ちょっとラザド」
「ちょ・・・きゅうけつきって・・・なんの・・・」
そこまで話して、何か頭をよぎる物が雪奈にはあった。
雪奈は再び首元に手をやる。
「さっきから首筋・・・ちょうど頚動脈の辺りを気にしてるわね?」
女性が席を立つと、雪奈の横へと足を運んでいった。
「あの・・・」
「大丈夫、怖いことないからちょっと見せて」
雪奈のブラウスのボタンに手をかける。
「何も無いですって」
その手を握り、拒否をしようとする。
「大丈夫、お姉さんに任せて」
その女性が耳元でささやく、自然と雪奈の手から力が抜ける。
「えっと・・・あの・・・」
「おお?」
その光景をラザド、と呼ばれた白髪の男が覗き込みに・・・。
めぎょ
女性から拳がラザドに飛んだ・・・。
「覗くな!このバカ犬!!後ろ向いてなさい!」
「うう・・・・いたい・・・」
ラザドは部屋の隅っこまで吹き飛ばされると、仕方なくそのままカベに顔を向けるのだった。
「じゃあ続きね・・・」
プチ、プチとブラウスのボタンを外し、雪奈の肌の露出面積を広げていく。
「・・・・・え?」
「あの・・・もういいですか?」
女性の目的のものは、なかった。
「なんだかよくわかんないんですけど」
「え、ええ、そうねごめんなさい」
「・・・ちょっとドキドキしただけです、その・・・」
赤くなった顔を下に向けつつ、外された制服を元に戻した。
「・・・ちょっと、ラザドどういうこと?」
「どういうことって・・・」
カベから視線を女性に戻し、ラザドが立ち上がろうとした。
「跡が無かったわよ?」
「は?」
ラザドの視線が女性から雪奈に向かう。
「いやいや、間違いないっすよリン姉さん、この子の匂いであってるっす」
鼻先を、くんくん。匂いをかぐ。
つられて、雪奈も自分の腕の匂いをかぐ。
「・・・・私、臭いますか?」
がつんっ、こんどはカカトがラザドの頭へと入った。
「いちち・・・てかリン姉さん、この子昼間に学校来てる時点でハズレですよ」
「あ」
「この子が何かしら関わっているとしても、被害者かなんかじゃないんですか?」
「被害者だったら死んでるに決まってるでしょーが」
「あの・・・よくわからないんですけど」
「ああー・・・とりあえず、昨日の夜に何も変なことなかったのよね?」
「えと・・・たぶん」
雪奈は自信なさげに言う。
「そう、ありがと。もう教室戻っていいわよ」
「はぁ・・・それじゃあ失礼します」
(夕べ・・・良く覚えてないんだよね)
気がついたら家に帰ってたことには触れずに、雪奈は教室に戻るのであった。




その2

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