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第11話:真実



「武器を変えれば強くなるとでも思ったか?」
クラウスはアルフに剣を真っ直ぐ構えると言い放った。
「強くなるわけじゃない・・・今までが弱かっただけだ」
ゆっくりとアルフが剣を抜く。
「ふん、ガキの言い分だ」
「ガキなもんで」
言いながらアルフは抜き放った大剣の刃を背に向け、地面と平行に構えた。
「なるほど、確かにお前さんの太刀筋は短剣の動きではなかったが・・・」
アルフとクレアルの距離が短く狭まっていく、クラウスがじりじりと近寄るのに対しアルフはその場から動こうとはしない。
あと2歩ほどでアルフの距離、3歩ほどでクラウスの距離だ。
その瞬間、アルフが動いた!
「・・・見事」
アルフはもとの立ち位置にいた。
カラン・・・・。
クラウスの持っていた盾の面積が大きく減った、アルフが斬ったのである。
「見えたかい?」
アルフは挑発的な言葉をクレアルに投げた。
「・・・・」
言葉を何も発せずに盾を捨てると、今度は剣を両手で構えた。
「残念だ」
「ん?」
「それほどの実力を持つ人間が、なぜこのような道を外れるような真似をする」
クラウスは剣を両手でがっしりと構えると、つぶやくようにアルフへ言葉を放った。
「城に壊滅的な被害を与えて!隣国の姫君を攫い!あのエドガーと何を企んでいるっ!?」
「おっさんは利用させてもらっただけだ、でも色々とオレに教えてくれたからね?少なくともあんたたちよりは信用できるよ」
アルフは姿勢を乱さず、同じ立ち位置のままクラウスを睨み付ける。
「このままではフェルドと戦争になるっ!貴様らのふざけた企みで多くの兵や民が巻き込まれるんだぞ!」
アルフの視線とクラウスの視線がぶつかる。
「オレに勝ったら教えてあげるよ、俺に負けたら・・・思い知らせてやる」
「では・・・教えてもらおうかっ!」
クラウスが剣を縦に振るう!
アルフはそれに対し剣を横に向けて受け止める!
止められた剣が一瞬で離れる、同時にアルフの肩口に向かって真っ直ぐ突き進んできた!
瞬間的にアルフの肩がぶれたように見える・・・かわした。
アルフの真横に剣が流れる、同時にその剣は方向を変えアルフの体を切りにかかってきた。
「へぇ?」
アルフは感心したような声をあげつつ、一瞬で後方に下がる。その瞬間アルフの剣がクレアルの目前に迫っていた。
「くっ」
クラウスは自身の剣を戻しつつ、自分自身も横へ進み正面からアルフの剣を受け止めた。
受け止められたと思いきや、アルフは剣に力を込める。
「ぬうっ」
声を上げ力に負けてクラウスの体は後ろへと押し戻されようとしていた。
クラウスも負けじと力を込める。
その瞬間を狙ったかのようにアルフは体ごと、剣ごとクラウスの横に回りこんだ。
「!」
一瞬の隙がクラウスに生まれる。バランスを崩すまいと、アルフの正面に立ち続けるように剣を振るいながら体の向きを変えつつ後方へと飛んだ。
「っ!」
瞬間、クラウスの左肩と右腹部から血しぶきが上がった。
そしてクラウスの剣は両断されていた。



「つっ!」
斬られた剣を半身で構えつつも、クラウスは自身の目を疑った。
(今の攻防の・・・いつ斬られた!)
怒りと絶望の形相でアルフを睨み付けると、そのままの上半身の構えを取りつつも・・・片膝ついてしまった。
「倒れないだけ立派なもんだね、じゃあ思い知ってもらおうかな」
アルフは剣を肩で構えるとクラウスの正面に立った。
「兄さんっ!」
「来るなっ!」
「別に来られても構わないけど?」
「アルフ君・・・」
アルフはシールを見ると、そのまま自分の鞘に剣をしまい投げつけた短剣を拾い上げる。
「全員相手にしてあげてもいいけど?」
アルフが残っている騎士達に声をかける。
「・・・いらん挑発をするな、我々では貴様に勝てん」
「そ?じゃあ思い知ってもらうことにするよっと・・・」
アルフは懐からエドガーから預かったガラス玉に魔力を吹き込むと、クラウスの前へと転がした。
「・・・これは・・・大臣か?」
「少なくともオレにはそう見えるね」
「これはっ!?」
そこにはアルフが一度見た光景が広がっていた。
獣をバラバラにし、肉片と化し呪術的な方法でその肉片が死ぬ前に人間の子供えと移植されていく様だ。
当然移植される側の子供も、移植される部位があらかじめ体から引き剥がされている。
もはや叫ぶ元気もないのか、その玉の中に写っている子供は目が宙を泳いでいる。
涙の跡が顔に浮かんでいる、しかしその顔も次第に皮が引き剥がされ、新たなる獣の皮がつけられていく。
クラウスは思わず目をそむけた。
「見ろ」
脅すように、強い口調でアルフが声を上げる。
「お前たちもオレに殺されたくなければしっかりと見るんだ」
クラウスの周りに動ける騎士たちも集まる。シールは覗き込んだ瞬間に目をそむけた。
「アルフ君これは・・・」
「見たまんまだよ、その呪文を唱えているのはお前らの国の大臣に見えるが?」
次に写ったのはこのレイル王国の国王だ。
人前に出てくるときの威厳など感じない、人形のように同じ表情をただただ浮かべている。
「おっさんの調査では国王も調整済みらしいよ」
「まさかっ!」
「考えても見てよ?そこに写ってるのは大臣だ、そして指示しているのも呪文を唱えているのも大臣だ」
「そしてそこに写っている子供は・・・今まさに鳥の羽を植えつけられている子供の顔はオレの母さんの本当の子供だ」
「!」
「今から4年くらい前の話しだよ・・・そしてオレはこの子供とさっき戦った」
「アリス様の・・・」
騎士団の一人が呟く。アルフの母は昔騎士団で隊長職についていた実力者だ。
「オレはいままで、あいつを・・・ユーリィを殺したのは北門で暴れてた化け物ミミズの仕業だと思ってた。実際あいつが崩した城壁に押しつぶされていくユーリィを見たんだ・・・」
「アルフ君・・・」
シールがアルフの表情を伺う。
アルフの瞳からは涙が流れていた。
「何度も何度も探したさ、あいつは強かったからあの程度じゃ死なないと・・・そこらじゅうの瓦礫をひっくり返して・・・でも見つからなかった」
アルフの瞳から、涙は頬をつたい地面へと向かう。
その時、初めてアルフは自分が涙を流していることに気づくと顔を伏せ涙を拭った。
「そりゃ見つからないよな・・・生きて・・・そんなところにいるんだもん」
「しかし・・・これが事実だとしたら・・・」
「ふざけんな!本物だ!あいつはずっとオレを練習相手に剣を磨いてたんだ!オレの動きを知ってるんだよ!」
アルフが大声で騎士の一人に叫んだ。
「あいつは・・・ガルーダと呼ばれてたあいつはオレの動きを知ってたんだぞ!初見のオレの剣の抜き方を知ってたんだぞ!」
アルフは一息付くと、小さな声で泣きながら声を発した。
「・・・・昔あいつに蹴られた場所と、まったく同じ場所を同じ軌道で蹴ってきたんだ・・・」
アルフは自分自身のわき腹に手を当てると、もう涙も拭くことを忘れて空を見上げた。
「うぅ・・・ああああ・・・・ああああああああああ!」
声を上げて泣きじゃくるアルフを、騎士達はただ見守ることしか出来なかった。




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