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第10話:追手



「ただいまー」
「おかえり」
ずるずるとガルーダを引きずってアルフが馬車に合流する。
「そいつは?」
「生け捕った」
ぽいっ、と手を離すと。
「生け捕った・・・って、どうするつもり?」
「連れて行く」
「何を言い出すかと思えば!」
エドガーが表情を険しくする。
「危険だ、ここで処分するべきだ」
エドガーが剣を引き抜きガルーダに詰め寄ろうとする。
「そんなことはさせないっ!」
ガンッ!
アルフが珍しく声を荒げると、エドガーとガルーダの間に剣を振り下ろす。
「っ」
全員の視線がアルフに向かう。
「ミューラさん、こいつの回復をお願い」
「ですが・・・」
「こいつが死んだら、あんたを殺す」
アルフが鋭い視線でエドガーを睨み付ける。
「アルフ、どういうこと?」
ノークがアルフに詰め寄る。
「しっ!」
アルフはそう言うと、しゃがんで地面に左耳をつける。
「・・・追っ手かな、武装した人間が乗った馬・・・7つ」
「騎士か!」
エドガーもアルフと同様に地面に耳をつける。
「・・・確かに何か聞こえるが・・・」
「さっきまで戦闘してたからね、オレは感度がいま上がってるんだ」
エドガーとアルフは体を起こす。
「オレが足止めをする」
「何を・・・」
「あの書類はさ・・・・」
あの書類・・・領主の息子から貰った書類のことだ。
「次の国境の町の密航屋で使うんだ」
「ふむ」
「川を渡るのに夜中に船で渡る、その船は今日の夜中でるんだ」
国境の町を抜けるとすぐ川が広がっている。
「夜中・・・か」
今は太陽が真上に来ている、お昼前後だろう。
「今のペースだと町に到着するのは夜になるだろうな」
エドガーが補足する。
「そこそこ余裕があったんだけど・・・戦闘が2回入るとなると別の話でね」
アルフがエドガーに書類を渡す。
「町の東側にある夕闇亭って酒場で主人にその書類をみせて」
アルフはしゃべりながらガルーダを大事そうに馬車に乗せると、剣を手に取る。
「こいつも連れてって、こいつが死んだらオレは何をするかわかんないからよろしく」
「お前はどうする気だ?」
「オレ一人ならどうにでもなるよ」
今までにも何度かアルフは国境を越えたことがある、むしろ一人の方が手間はかからないだろう。
「ほら、早くいきな。この船を逃すと次は1週間後だよ」
アルフが3人を促すと、馬車から離れる。
「しかし・・・」
「行きましょう」
ミューラが反論をしようとするが、その言葉をノークがさえぎる。
「国家の危機なんでしょ?この子なら大丈夫」
ノークがミューラを馬車に押し込み、エドガーも御者台につく。
「この合成獣はあたしが責任をもってみてるから」
「よろしくノーク」
「怪我しちゃ駄目よ?」
「大丈夫」
「アルフ!受け取れ!」
エドガーがアルフに筒状の紙を渡す。
「それがあればフェルドに入れるはずだ!必ず追いつけ!」
「・・・了解!」
アルフはその紙を胸元に書状をしまうと、今度こそ3人と別れた。



「さて、見えてきたな」
アルフの視線の先には、感じ取っていた通り7人の姿が確認できた。
「まず止まってもらわないとな」
アルフの纏っていた空気が変わる、辺りの空気が重々しくなった。
『ヒヒーン!』
『ウウウン!』
7頭の馬がそれぞれの鳴き声をし、動きを止める。
「静めろっ!」
騎士のリーダーが号令すると、騎士たちはそれぞれの馬を御する。
・・・一人を除いて。
「ちょっとっ!兄さん!どうやって!?」
「落ち着けシール」
兄さん、2番隊の隊長”クラウス=クレアル=フレイムロッド"その人だ。
シールの乗る馬を横から手綱を取り御すると、アルフに視線を向ける。
「この闘気・・・いや殺気か」
クラウスが馬から降りる。
「お前たちも降りろ、もうこいつらに乗っては戦えん」
その言葉を受け、騎士たちは全員地に足をつける。
その行動を眺めていたアルフは、その7人に歩み寄っていく。
「アルフくん・・・」
シールがつぶやく。
「大したもんだね、オレを前にして誰も落馬させないのは」
アルフは背中の剣を引き、大地に鞘ごと突き刺した。
地面に刺した剣は抜かず、腰についている短剣を引き抜く。
「悪いけど、速攻片付けさせてもらうよ」
アルフの周りの空気が更に重くなる。
「お前は下がっていろ、シール」
反射的に、シール以外の騎士が剣を構える。
「あああああああああああ!」
アルフが一気に距離を詰める。
「ここは私が!」
「待て!」
クラウスの一言を無視して一人の騎士が前に走りこむ。
「相手じゃねぇ!」
アルフが軽く剣を振る。
「がはっ」
瞬間的に騎士の一人が地に伏せる。
「まとめてかかってきやがれ!」
言いながら騎士の一団の中に走りこむ。
「なめるな!」
そこに一太刀、アルフに向かい剣が伸びてくる。
「へっ」
軽い身のこなしでアルフはその剣をかわし、返しの手でその剣をはじく。
「くっ」
剣を伸ばしてきた騎士は、剣を流され体の動きが一瞬と止まる。
その瞬間に、アルフの蹴りが騎士の手に入る。
騎士の剣が上空へと弾き飛ばされた。
さらにアルフはその騎士への追い討ちをかけるべく走りこむ。
『キイイイイイイン』
アルフの剣が騎士の目前で止められる。
「こいつは私が相手をする、手を出すな」
クラウスが割り込んできた。
「しかし隊長」
「お前達では相手にならん」
「くっ」
「やっとわかってくれた?」
「お前は危険だということがな」
クラウスが剣を片手にもち、広めの盾を構える。
「へぇ」
アルフも短剣を低く構えてクレアルとの距離を取る。
二人の剣を握る拳に力がこもる。
二人は、共に大地を強く蹴った。
「ふっ!」
アルフが息を一息、剣での攻撃をしかける。
その剣をクラウスの盾が防ぐ。
「はあ!」
受けた盾で剣を弾くと、クラウスが剣を振り下ろす。
「ちっ」
アルフが回避それを回避。
「まだまだ!」
クラウスの連撃。
「くっ」
アルフが徐々に後退する、クラウスの剣がアルフを追い詰める。
「そんなものか!」
アルフは襲いくる剣を受け、避け押さえつける。
しかしアルフの剣は反撃に手が進まない。
「そんなものかそんなものか!」
「ぐっ」
「オレの見込み違いだったかもしれんな、以前見させてもらった時はもっと強かったぞ!」
「そりゃあ・・・どうも!」
アルフが剣を投げ、クラウスとの距離を取る。
アルフは姿勢を制御し立ち上がると、ちょうど突き刺さっていた愛刀の柄に手をかけた。




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