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第8話:国境までの道のり



「この街を越えると国境の町まで検問所はないよ」
そんな宿場町、その宿屋でアルフ達は休んでいた。
「シールさんは?」
みんなでエドガーとシールの部屋に集まっているのに、シールだけが席を外していた。
「馬の世話をしてるよ、いつも自分でしてるんだってさ」
「自分の馬・・・金持ちは違うわね」
ノークがつぶやく。
「若干1名はお金どころか1国を所持してるけどね」
村娘に扮したミューラに視線が集まる。
「そんなことよりだ」
エドガーが本題を切り出す。
「しっかり手配書が回り出しているようだな」
町に入る前に、町の守備隊と一悶着あったのだ。アルフが金で済ませたが。
「国境を越える時はそう甘くはないだろう」
「そこは考えてあるから安心していいよ」
アルフがにやりと笑う。
「底が知れんお子様だな・・・頭が下がるよ」
「まー、あとはシールだね」
「シールさん・・・そろそろ別れるべきでしょうね」
「明日の朝食にでも眠り薬を混ぜておくよ」
「そんなもんまで持ってるのか」
「ノークがね」
アルフがノークに視線を送る。
「乙女のたしなみよ?」
ミューラが胸元から小瓶を覗かせる。
「そのたしなみで三度ほど盛られかけてるけどね」
「アルフは勘が良すぎるのよ、つまらないわ」
「なにが・・・」
「い・ろ・い・ろ♪」
「・・・まあいいや、ちょっと出かけてくるね」
アルフが席を立つ。
「どちらへ?」
「根回し、ここにちょっとした知り合いがいるんでね」
「そいつは・・・」
「大丈夫、無許可で国境は何度も通ってるから」
『通ってるんだ・・・』
アルフは席を立つとドアノブに手をかける。
「あ、エドガーさ・・・」
「ん、何だ?」
「あとでさ、例の映像みせてもらえる?」
「ふむ・・・」
「頼むね」
アルフは振り向かずにそういうと、ドアをあけて出ていった。



「ふあぁ・・・」
大きなあくび一つ、アルフが目を擦る。
「一晩中なにしてたんだか・・・」
「だから根回しだよ・・・あふ、国境を通るのも一苦労なんだから」
「それよりもだ・・・真っ直ぐ国境を抜けれるものなのか」
いまアルフ達は検問所に向かっている。既にアルフも含め手配書が国中に回っているのにもだ。
ちなみにシールまだベッドの中でぐっすりしている。
薬を盛られる以前の問題だった。
「大丈夫だって、ほら見えてきた」
朝露の霧で、もやがかった視界の先に人影が3つ見える。
「おはよう、アルフ」
その3人組の中の一人が軽く挨拶をする。
良く見ると2人は兵士の格好を、あとの一人は毛皮のコートを羽織った青年である。そのコートの男がアルフに挨拶をしてきた。
「おはよー、今日も頼むね」
そんな二人にエドガーが不振な目を向ける。
「ああ、こいつはこの街の領主の家の長男だよ」
アルフが軽く説明をする。
「親父が体調崩してるからね〜、実質この街は僕の意のまま気の向くまま〜」
へらへら笑いながらその青年がアルフの肩に手をかける。
「それで、例のものは?」
「ああ、持って来てるよ」
アルフは黒い布に包まれた、一抱えはありそうな箱を馬車から取り出す。
「ほら、確認するか?」
「ここで確認できるかよ、信用してやる」
「とびっきりの大物だから気をつけて扱えよ?」
「おーけーだ・・・お前ら、屋敷に運んでおけ」
「それで、頼んでおいた書類は?」
「こいつだ、人数分発行しておいた」
アルフは男から羊皮紙の書類を四部受け取ると中身を確認する。
「うん、ありがと」
アルフはその書類をエドガーに渡すと、御車台に乗る。
「おう、それじゃあ通るんだ」
その姿を確認した男は検問所を開く。



「何を渡したんだ?」
「ライトイーターって魚だよ」
「お魚・・・ですか?」
ミューラが首をかしげる。
「夜行性の魚で、光を食べ闇を産む魚ですな。川底のどうしても見えないような場所に昼間は住んでいて、夜になると月明かりを主食とする魚です」
「良く知ってるね」
アルフが驚いたようにエドガーを見る。
「あの男は珍獣マニアか何かかな?」
「その通り、オレが森で捕まえた化け物なんかを良く買い取ってもらってたんだ」
「便利なコネがあるもんだな」
「いやー、あれはオレのじゃなくておふくろのコネ。孤児院の経営が厳しくなったときは良く母さんと売りにきてたんだ」
アルフも只者じゃないが、あの孤児院の”母さん”もなかなかな人物のようだ。
「それで、さっき貰った紙は?」
「あれは魔法の紙、最後の国境で使う」
「ねえ!ちょっと!」
いままで御者台を守っていたノークが声をあげる。
それと同時にエドガーとアルフが外に出る。
「何ですの?」
ミューラが御者台に体を乗り出す。
「お客さん・・・かな?」
そう言うが早い、ノークは腰から短剣を引き抜き魔法を唱えだす
アルフが大剣を荷台から外し、荷台の右に。
エドガーはその反対側に身構える、すでに剣を抜き放っていた。
「・・・・来たっ」
そういうとアルフは一気に走り出し、気配のある森に一気に距離を詰める
「おっさん、ここは任せて!」
アルフは走り際にそう言い放ち、精霊を召還する。
「・・・・気をつけろよ」
エドガーの一言を聞こえたのか、聞こえなかったのかアルフは森の直前で足を止める。
「さて・・・ここまで来たのはいいけど・・・」
アルフは担いできた剣を片手で地面に突き刺し、鞘から剣を抜く。
アルフの気配に追っても気づいたのか、森からの気配は動きを止めていた
「・・・・・10・・・いや11体か」
アルフは目を凝らし、気配を探る。
「出てこない気か」
そう言うが早い、アルフは駆け出すと森に侵入した。




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