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第7話:迎撃



「いってぇなぁ・・・もう」
「だったらそんな戦い方をしなければいいだろ」
「騎士が剣を捨てて戦うってどうなんですか・・・」
エドガーとシールがガルーダを取り囲むように立つ。
「ちっ・・・」
その後ろでは血まみれの狼男が倒れ伏していた。
「手を出したら許さないよ」
アルフが二人を睨みつける。
その視線を受けた二人は、お互い顔を見合わせると剣を収めた。
「なめるなよ」
アルフは腫れたおでこをナデつつガルーダに視線を戻す。
「そんなんじゃない、それより聞きたいことがある」
アルフが自分で大地に突き刺した自分の剣に並び、柄に手をかける。
「オレが剣を地面に刺したとき、抜かせるかっつったよな」
言いながらアルフが剣を引き抜く。
「なんで抜くと思った?」
「はぁ?何言ってやがる」
「答えろ、オレは人前で剣を抜いた事はゼロに等しいんだ」
「剣を地面に刺したから抜くと思っただけだ」
「こんな剣の抜き方する奴は滅多にいるわけないだろ?」
アルフが日に当たり銀光に光る刀身をガルーダにつきつける。
「どこで見た」
アルフの視線を受けたガルーダは、シールとエドガーに視線を送り再びアルフに向ける。
「・・・部が悪いな」
ガルーダがそう一言。
バンッ!!
とたんにガルーダの背中から巨大な翼が広がる、そして体が宙に浮く。
「ありかそんなの?!」
アルフがあわてて剣を抜きつつ追いすがる、しかしすでに剣ではどかないほど上昇している。
ガルーダが滑空し、狼男をの肩口を足で掴む。
「逃がすかよ!」
アルフが剣を構えて走り寄ろうとする。
「くらえっ」
ガルーダは狼男を持ち上げると、つぶてのようなものを投げた。
「ちっ」
アルフはそれを切り落とそうとした。
ボンッ!!
剣に当たった瞬間にそのつぶては破裂、あたりに白い煙が広がる。
「くそっ」
アルフは煙から逃れるように、後ろに下がり上に視線を送る。
・・・煙が晴れるころには、合成獣2人組の姿はなくなっていた。



「・・・・くそっ」
アルフは悔しそうに剣を納め、その剣を馬車にくくりつける。
「なんだったんですか・・・突然襲い掛かってくるなんて」
「あれが合成獣部隊だ」
「無駄に時間を食った、急ぐよ」
アルフが馬車の荷台に引っ込む。
エドガーとシールは再び顔を合わせると、御者台と馬の上に納まった。
「お怪我はありませんでしたか?」
ミューラがアルフの顔を覗き込む。
「・・・」
アルフは顔を下に向けたまま、無言だった。
「どうか・・・なさいましたか?」
「・・・なんでもないですよ」
やっと口を開いたアルフ、その顔には汗がびっしり浮かんでいた。
「あの野郎・・・思いっきり蹴りやがった」
良く見ると、アルフの脇腹からうっすら出血があった。
「いま治療を・・・」
「ここを蹴られたのは二度目だ・・・」
「え?」
精霊を呼び出したミューラが、魔法による治療を始めた。
「なんでも・・・治療なんていらない」
アルフがミューラの手を払おうとする。
「いけません、血が」
「いらないっ!」
アルフが手を払い離れようとする。
「いけませんっ!!」
思いのほか強い力でアルフの体が押し付けられる。
「え・・・」
「血が出てるじゃないですか・・・」
「自分で治せる・・・いいよ」
「・・・・」
制止するアルフを無視してミューラが抱きしめるようにして魔法をかける。
「イライラしているときはこうして母になだめられました」
「・・・オレの母さんはゲンコツしてくるよ」
アルフの孤児院の院長・・・口の前に拳が飛ぶタイプだ。
「素敵なお母様だったんですね?」
「・・・・・・」
「もう大丈夫だよ」
アルフは体をゆすりミューラから離れる。
・・・少し顔が赤くもみえる。
そのとき、アルフの外套から葉っぱのようなものが落ちる。
「これは・・・羽?」
ミューラがそれを拾い上げる。
「さっきのガルーダとかいうのの羽でしょ」
「あの合成獣さんの?」
「これは・・・北の森周辺の化け物の羽だな、文字通りガルーダって化け物のね」
「よくご存知ですね」
ミューラが感心したようにアルフの顔をみる。
「何度も遭遇してるからね」
アルフはミューラから羽を受け取るとそれを眺める。
「・・・なるほどね」
アルフはそうつぶやきつつ羽を馬車の外に捨てると、外に視線を向けたまま沈黙を守った。




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