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第5話:アルフの理由



「市街地を抜けたらすぐ検問所だから、そこでシールと待ち合わせなんだけど・・・」
「この状況であのおぼっちゃんも来るのか・・」
アルフは御者台に座りながら後ろの3人に声をかける。
「あんた腕章は?」
「置いてきた、私はこの国の騎士ではないからな」
「バカみたいに真面目だなぁ、ほれコレつけて」
アルフは自分の腕章をエドガーに投げる。
「しかし・・・」
「検問抜けたかったら大人しく言う事聞かないとね、僕の横に出てきてよ」
「・・・危険だ」
「いいから、出てこないとここで放りだすよ?」
「ぬぅ・・・」
エドガーは腕章を大人しく腕章をはめて御者台に座る。
・・・顔はまだ納得していない様子だが。
「あー来た来た」
後ろからシールが白馬に乗ってきた。
「うあぁ・・・」
格好が格好ではなければどこかの王子様のような、そんな風体だ。
「アルフ君・・・それに・・・エドガーさん?!」
シールが顔をこわばらせる。エドガー怪訝な表情を浮かべる。
「やっほー」
「アルフ君・・・彼は・・・」
「彼は無実だよ、昨晩ずっとオレと一緒にいたからね」
「え?」
「昨日の騒ぎは鎧騎士を賊が盗み出そうとしてやったんだもん、すでに騎士に合格したエドガーがやるわけないじゃん」
「しかし・・・」>
「そうでなければこんなところに平然と座ってられないでしょ?」
アルフがエドガーにあいづちを求める。
「ああ、まあ・・な」
エドガーが釈然としない顔で返事をする。
「この書状には新人全員でって書いてあるから彼も同行者だし、立派に騎士だよ」
アルフはそういうとシールに書状を投げる。
シールはそれを広げると、確かにそう記されていた。
「それに本当に疑われてたらエドガーここにいないよ」
「それも・・・それもそうですね」
シールは書状をアルフに返し、にこりと笑う。
「疑ってしまい申し訳ありません、エドガーさん」
「う・・・あ・・う、うむ」
「・・・脂汗でてるぞ」
アルフが小声でエドガーに言う。
「・・・いや、しかしだ」
「・・・いいんだよこんなの口八丁手八丁で」
「どうかしました?」
「いやーいやいやいやなんでもない、ああそうだそうだ」
アルフは首は左右にぶんぶん振って、にははと笑う。
「後ろには技師のノークさん、それに助手のミューラさん」
「よろしくー」
「どうも・・・」
ノークとミューラがかわりがわり顔を出し挨拶をする。
「よろしくお願いします!」
でかい声でシールが挨拶をする。



「話は聞いております、シール=クレアル=フレイムロッド様とアルフェリア=ロイ様ですね?」
「そうだ・・・」
アルフに扮したエドガーがそう答える。
「それで・・・シール様というのは・・・」
検問所の兵士がアルフを見る。
「オレじゃないよ・・・あっち」
アルフが指を刺すほうで、シールが果物を選別している。アルフにいかされたのだが・・・。
「しかしでかい剣ですね、これは騎士様の剣ですか」
馬車にくくりつけてあったアルフの剣を兵士がみつける。
「そうだ・・・」
「街道から離れますと、すぐ森ですのでお気をつけください」
「わかった・・・」
「シールさん!そろそろ行くよ」
アルフが声をかける。
「はーい」
果物を積んだ袋を片手にノークがかけてくる。

「意外とすんなり通れたわね」
ノークがあきれたように言う。
「この書状の効果が絶大だね、一戦くらいの覚悟はしていたのに」
アルフが丸められた書状をポイッと荷台に投げ込む。
「ところで・・・」
荷台からミューラが出てきて、御者台に座る。
「・・・狭いよ」
アルフがうめく。
「皆様は何故、私達の・・・その、お手伝いをしてくれるのでしょうか?」
シールに聞こえないように小声で聞く。
「んー?ほら、僕が邪魔をしちゃったからね」
「でも、それだけでこんなにもしていただけるなんて・・・」
「それは私も気になるな」
エドガーも後ろから顔を出す。
「狭いって・・・馬車、任せたよ」
ノークにたずなを渡すと、アルフは荷台にひっこむ。
「んー、まあコレなんだけど」
アルフの懐から拳大の青いオーブが顔をだす。
「これは?」
「魔法の威力が上がる特殊なアイテムですな、相当入手困難なもので扱うのも危険なものだから滅多に見れない貴重品です」
エドガーがミューラに説明をする。
「青のオーブという名前で、自然にしか生まれないから高価なんですよ。私も小さいものを1度見ただけですし・・・」
アルフはそのオーブをコロコロと転がす。
「これはオレの親父の心・・・なのかな?」
「え?」
「オレの親父は魔力の研究者でさ、魔物の魔力なんかも研究対象だったんだ」
「あたしの魔法の先生でもあったのよ?」
前を向いたままノークが付け足す。
「それでミミズの研究中にさ、やつの食事に巻き込まれて死んだんだ」
「・・・」
「まあそれは親父が間抜けだったってことで割り切れたんだけど・・・親父が死んだことがきっかけになって青いオ−ブの元ができちゃってさ」
軽い口調でアルフが言う。
「青のオーブは周りから魔力を補完して大きくなるって親父のノートにあって」
「そうなのですか?」
「そういう話は私も聞いたことは・・・」
「実際そういうものなんだよ、前に一度作ってみたし」
「・・・なんだって?」
エドガーが思わず聞き返す。
「製法も親父のノートに書かれてたよ、危険なものだから教えないけど」
「それだけで一財産だな」
呻くように言うエドガー、今アルフの手の中にあるサイズにもなると小さな国を買えるくらいの額になるからだ。
「青のオーブの大きさが一定のサイズを超えてから、ミミズの様子が一変してさ・・・」
アルフの言葉に影が感じられる。
「人を襲うようになったのよ、元は森の進出を食い止めるために国に作られた合成獣が突然暴走を始めたの」
ノークがアルフの言葉に付け足すように言う。
「森を少しづつ削ってたでかいミミズの1匹が、突然街にまで襲い掛かってきたんだよ?騎士団が駆けつける前にかなりの被害が出たんだ。オレはそのときまだまだガキだったし・・・知り合いにも犠牲者が出た」
消え入りそうな声を出すアルフに、今もガキだとは誰も言わなかった。
「巨大喰蟲はオーブに盗られた魔力を取り戻そうとして、魔力の強いものを襲うようになった・・・あたしはそう結論を出して国に報告したわ。オーブの生まれ経緯は省いたけどね」
当時の状況を思い出しながら、ノークとアルフがかわるがわる話を進める。
「そしたら、お国はなんていったと思う?」
「当然討伐しようとしたのでは?」
「今ミミズを失ったら、国が森に埋まるから駄目だってさ・・・ミミズは1匹じゃないのにね」
「それは仕方のないことでは・・・」
「そっちは建前、本音は青のオーブをもっと育てたかったんだそうだよ」
アルフがオーブを懐に戻す。
「このサイズで既に中規模の村くらいなら滅ぼしておつりが来るサイズだよ、だからエドガーの話も思い当たる節があったんだ」
「戦争の準備・・・・ですか」
ミューラが悲しそうな顔をする。
「まずはフェドルでしょうね、国土の大きさの割りに魔道の文明が進んでるから」
ノークが不安をかりたてるように言う。
「そんなこと・・・させません」
ミューラが珍しく引き締まった言葉を紡ぎだす。
「戦争を食い止めます、同盟国同士で争っていいわけありません」
「まあ戦争の切り札になりえるこのオーブがないからな・・・すぐにってことにはならないでしょ」
アルフは再び馬車の御者台に戻ると、ノークにもたれかかる。
「でも本当に戦争になるのなら嫌だな・・・母さんたちもいるし」
孤児院の院長たちである、アルフ自身は違うが兄弟達の多くは戦争で親を亡くしているものが多い。
「そんときはあんたが守ればいいのよ、騎士様でしょ?」
アルフの頭を撫でながら、ノークが優しく言う。
「あはははは、いきなり国を裏切ったけどね」
「別に騎士じゃなくても人は守れるわよ、あんたなら大丈夫」
「んー・・・自信ないなぁ」
アルフは体を起こし、リンゴを袋から出す。
「シール!時間が少し遅れてるから近道するよ」
そう言ってシールにリンゴを投げ渡す。
「え?でも街道からはずれると・・・」
「夜になると森から魔物が出てくるかもしれないでしょ?森から離れるルートで近道できる道があるからそっち通ろう」
大樹の森に国境はない。未だに北の方角をみると森が広がっている・・・ような気がする。
「アルフ君は・・・こういうの慣れているのですか?」
ミューラがアルフの顔を覗き込んでくる。
「こういうのって?逃亡生活?」
話しながらリンゴを磨いて噛み付く。
「すっぱいな・・・シールに任せるんじゃなかった」
ジト目でシールの背中を睨む。
「いえ・・・逃亡というか、旅行というか」
「んーこういうのは始めてかなぁ、普段は森に一人で入ってるけど旅行って規模でもないし」
アルフは口の中でシャリシャリ音を立てながら答える。
「結構手馴れてる感じを受けましたので・・・しっかりしていらっしゃるのですね」
「そーなのよ、この子がいると部屋は片付くしご飯も食べれるし」
「それはノークがガサツ過ぎるだけ・・・」
全員の視線がノークに集まる。
「・・・何よ?」
『いえ・・・』




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