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第1話:アルフ



「それではこれより、筆記試験の合格発表を開始する」
彩色の施された王国騎士の男は、仰々しく言葉をつむぎだした。
「ご存知の通り今回の試験には、古今東西から集められたいずれもひけをとらぬ強者が集まっている」
良く通る声で説明を始めている。
「今この場にいるものの数1000余名が本試験には100人程度しか残らない」
その大人数の強者ひしめくこの場所、レイル王国城下町の中央広場には大小さまざまな人間が数多く集まっていた。
この試験の受験者、野次馬、商売人数多くの人でひしめく中には子供の姿も珍しくなかった。
「毎年合格者に対しての嫌がらせや、暴力行為などが少なからずとも起きる」 さまざまな人間が集まれば、やはり合格者と不合格者の間で衝突はつきものだ。 ましてや国に仕える仕事、騎士に憧れを抱く若者は大勢いるが生活が不安定な者はそんな若者より多い。
「そのような行為をすること自体が、不合格者の証明である」
そう、この試験は王国が年に1度行う“騎士”の選抜試験である。
「上記に記載された受験番号の者は城の闘技場にて本試験を開始するので速やかに移動するように!」
その言葉と同時に、その騎士の従者らしき城の兵士が掲示板にでかでかと紙を広げる。
その瞬間に、小さなどよめきが大きなどよめきへと変化した。
「本試験開始は30分後だが急ぎ確認し遅刻しないようにくること」
騎士が説明しているが、もはや聞いてる者は少ないだろう。
「それと本試験ではけがの恐れもある、心してかかるように!」
騎士の前にいる人間は皆、掲示板に目がいき話を聞ける状況ではない。
毎年そうなのだろう、騎士は話をするのをやめるとすばやく掲示板から離れた。 その瞬間、掲示板の前には人間が大量におしかけていた。
この試験の内容で重視されるのは剣の技術や作法だけではない。
第一試験は筆記試験で、その人物の品性を絞り込むための試験である。
また国の歴史や文化の知識、精霊の潜在能力なども審査対象である。
そんな数ある審査をくぐりぬける猛者の中から毎年数名、一般庶民から騎士へ成り上がることが出来る。
掲示板の前は、そんな試験を受けた老若男女でごったがえしている。
「さて、オレの番号はっと・・・・」
そんな猛者の中に、年のころは11、12歳くらいの少年が合格表とにらめっこしている。
少年は赤いツンツン頭が特徴的で、衣服から見て豊かな部類ではないだろう。
他の大人たちと比べると頭1つ分以上の差は確実にある小柄な少年だ。
推薦さえうければ子供でも審査対象ではあるが、ここ数年は十六歳以下の合格者は出ていない。
「よしっ・・・受かった・・・」
誰かの代理なのだろうか、それとも自分自身のことなのか小声で合格の確認をする。
「受かった!受かった!!」
その横では合格が嬉しかったのであろうか大喜びの青年が一人。
「アホか・・・」
小声で少年がつぶやく。
「おめでとう兄ちゃん、でも気をつけた方がいいよ?落ちた人から熱視線を浴びている」
その視線は、どーにも殺気立っているようだ。
「ありがとう、でもまだ筆記試験だからね、これからが本番だよ」
「それじゃ僕は失礼しまーす」
「ああ・・・それじゃあ」
少年は足早にその場を立ち去り、城に足を向ける。
「周りには、うなだれているゴロツキや傭兵崩れがいるけど、あいつら本気で勉強してきたとは思えないなぁ」
中には合格者にケンカを売り出す始末。
こんなとこからは、さっさと離れるにこしたことはない。
「何もこんなところで始めなくてもいいのに」
さっきの青年が人ごみに飲まれていく・・・。
「まったく、君みたいな子供が合格できるような試験にパスできない連中に騎士を名乗る資格はないな」
「それ、遠回しにオレをバカにしてない?」
少年同様に合否を確認したのだろうか、黒鎧を身にまとった長身の男が横について歩き出す。
「それにオレが合格したなんて一言も言ってないけど?」
アルフがまじまじとその男を眺める。若くはないが老いてもいない微妙な歳の男だ。
がっちりした体付きもだが、生やしたひげでかなり無骨に見えなくも無い。
「君みたいな子供が、城へ向かう道へ行くのがその証拠だ」
合格者と不合格者のいざこざもあるのでこの瞬間だけ、普段活気のある毎年城への道は閑散としている。
「名推理だことで」
言葉とは裏腹に、呆れるように少年は言い放つ。 「あんたも、受かったみたいだね?」
「当然だ」
「それじゃあ後ろから迫ってくるあの不合格者をなんとかしないとね」
「・・・無益な戦いは、控えるべきだ」
そう一言、そして男は走り出す。
追走するように、少年も後を追う。
「それじゃ闘技場に行きましょうか、えーっと」
「曲がりなりにも騎士を目指すのであれば、自分から名乗るものだ」
「そんな騎士道に準ずる生き方をするつもりは無いんだけどね」
「それでも、礼儀だ」
「・・・アルフだよ、アルフェリア=レイ」
やはり呆れ顔で、アルフは自己紹介する。
男は、満足したように少年の頭を撫でた。
「子供扱いしないでほしいな」
アルフは男の手を払いのける。
「おっと、これは失礼した」
少しの沈黙が流れ城を目前にする。
「私はエドガー=ヴェールだ、これでも一応現役の傭兵だ」
「あれ?あんた、黒衣のエドガー?」
傭兵の中で特に有名な部類にはいる男で、諸国を流しながら武者修行を続けている。
その活躍は、大なり小なりに聞こえてくる。
「そうだ、だがそんな大層な字はいらん」
「あっそ?まあ行きましょう、エドガーさん」
そう少年は促すと、城の門をくぐり闘技場へまっすぐ進む。



「なあおっさん」
「誰がおっさんだ」
二人が闘技場に入ると、思いのほか人数が集まっていた。
「あんたほどの有名人なら、わざわざ受験なんかしなくても仕官できたんじゃ?」
「剣術指南役でやっておったのだがな、自分が現役を退くのはまだ早いと悟ったんだ」
「ちゃんと騎士で、ってお願いしてもダメだったの?」
「いや、こういう試験があるのならばわざわざ回りくどいことをする必要などないだろう?」
わざわざ回りくどいことをして、試験を受けるのはいいのだろうか。
「でもなんでこの国なの?この国は周りの国とは同盟関係で戦闘そのものは幻獣くらいなものだよ?」
「この国とは縁があった。ただそれだけだ」
さも当然のように、エドガーは言う。
「私のことよりも、君だ」
「オレ?」
「そうだ、君はまだ子供だろう?」
「今年で、13だね」
「そんな君が、これからの試験に参加することがどういう意味を持っているか」
確かに、学校に通う必要がなくなったとしてもアルフは城で剣を振るうには若すぎるだろう。
「怪我をする前に帰れ、そう言いたいの?」
「それ以前の問題だ」
「まあ見てなって、無様に終わったりはしないし。オレがこの会場の中で一番の実力者だっていうことを教えてやるさ」
闘技場は、参加者が集まるのをまっていた。

「それではこれより、精霊騎士団の入団本試験を開始する」
とうとう始まった。城の関係者が観覧席にちらほらみえる。中には現役の騎士団員もいるようだ。
「筆記試験の合格、まずおめでとう」
試験官が声を張り上げる。
「先ほどからプレートが配られているだろう、それらを胸につけ番号が1番から20番までのものは、前に出ろ」
「いきなり何の説明もし始まるのかよ」
どこからともなくそんなことが聞こえてくる。
「剣を持って構えろ」
試験官の声に従い、思い思いの構えをして立つ受験生。
「あの試験官・・・」
「あいつは現役の騎士だろう、歩き方にスキが無い」
「うん、城の外で何度かみたことある」
騎士を選抜する試験だ、試験官も原職の騎士がいても不思議じゃあるまい。
「3番、6番、8番、11、14、15、16、19、20番、不合格だ帰っていいぞ」
『ええ?!』
一瞬のどよめき、剣の構えを見られただけで合否が決まるのだろうか。
「お前たちの剣には意思がない、成り上がり目的な人間に騎士などつとまらん」
「そんなのわかるわけないだろ!」
「そうだ!オレ達がどんな思いで受けに来てると思ってるんだ!」
抗議の声が上がる、当然と言えば当然だろう。
「わかる」
その冷静な声に殺気立つ脱落者、剣を構えたままだからいまにも襲いかかりそうだ。
「なぜなら私は精霊騎士団第二師団の隊長だからだ」
高らかに宣言。
「答えになってるんだかなってないんだかわかんないね」
アルフが前を直視したまま小声で言う。
「それだけ自分に自信があるのか、それか連中がクズすぎたのかのどちらかだろう」
エドガーが答える。
「少なくとも私が彼の立場に立たら、あんな部下なんぞいらないと判断するだろう」
「ほー、さすが黒衣のエドガー様。言うことが違うね」
こほんっと咳き込んで試験官が話し出す。
「これだけ言ってもわからないだろうから教えてやろう、お前たちでは実力も才能も到底足りない」
試験官はきっぱりとそう言い放った。
「その点は努力で多少補うことはできる、だがお前たちの剣からは志を感じない。」
「わけわかんねえよ!」
「目標あってこその努力である。お前たちが入団した後、何かしらに努力するとは到底思えない。」
文句を言ってきた参加者に試験官が説明を始める。
「それどころか基礎トレーニングで音をあげるのがオチだ」
「だからってこの審査のしかたに・・・・」
「私が不合格と言ったら不合格だ、それは変わらん」
さらに反論する言葉を強く遮る。
「くそっ」
不合格者は剣を鞘に収めると、口惜しそうにうしろに下がった。
「後の扉に観覧席に上がる階段がある、そこでなら最後まで見ていてもかまわない。自分には何が足りないかしっかり見定めておいて次回以降に挑戦してくれ」
その言葉をきっかけに、ぞろぞろと後ろに下がる不合格者。帰るものも中にはいる。
「次だ、21番から40番まで前に出ろ」
そんなこんなで、試験は順調に続いていく。
不合格者の中には、かなり不満のありそうなものもいたが試験官の気迫に押され、すごすごと退場していくのがほとんどだ。
「次、41番から60番まで前にでろ」
「はい!」
人気を大きな声の返事がきこえ、その者に視線が集まる。
「また豪勢な装備の持ち主だなぁ」
「どこぞの金持ちのお坊ちゃんだろうさ、鎧に傷一つ付いてない」
「その割に剣は安っぽいね」
頭の先から爪先まで、白銀の鎧と布で綺麗に彩られた格好。
どこぞのパーティにでもそのまま参加できそうな雰囲気なのだが、腰にぶら下げられた剣と鞘だけは目立った装飾がなく、それが逆に違和感を放っている。
「お前か、シール・・・」
試験官が困ったような声を出す。
「はい、兄さん」
「貴族であるお前が、こんな試験を受けずとも良いのに」
「私は公正で厳密な試験を経てこそ、真の騎士にふさわしいと思っていますので」
「わかったから・・・お前は合格だ、お前の構えなんぞいまさら見てもつまらん、上のクズ達よりは使えるんだからな」
試験官がうめく。
どうやら兄弟のようだ、しかも試験をパスされている貴族階級の人間なのだろう。
「兄弟という理由での合格ではないようだな、あのお坊ちゃん」
エドガーが目を向けると、向こうもこちらに顔を向ける。
「あ、あなたはエドガー=ヴェールさんではありませんか」
一斉にエドガーに視線が集まる。
『エドガー・・・あのエドガーか・・・』
『この辺では特に名の通っている腕利きじゃねえか・・・』
『子供連れで参戦かぁ?あの横のちっこいのは』
会場がどよめく、それほどにこのエドガーという男の知名度があるのだ。
「私はシール=クレアル=フレイムロッド、騎士見習いです」
合格を貰ったシールがエドガーに声をかけてくる。
「エドガー=ヴェールだ・・・どこかでお会いしたかな?」
エドガーもそれに答える。
「以前に城で、最も私が遠目でお見かけしただけなのですが・・・そちらはお弟子さんか何かで?」
シールがアルフの頭に手を伸ばす。
「オレはそんなんじゃないよ、他人」
アルフはその手を払いのけながら面倒そうに答える。
「付き添いか何かで?」
「他人と言ったでしょ?たまたま同じタイミングで会場入りしたから横に並んでるだけだよ」
「この子もこの選考会の参加者だ」
エドガーがそう付け加える。
「おしゃべりをそこまでだ、60番から89番まで前に出ろ」
試験官がそう言う、いつのまにか終わっていたのか不合格者がぞろぞろと後ろに下がっていく。
「それじゃあ剣を構えてくれ」
思い思いに剣を取り出す参加者たち。
「あのー」
アルフが試験官に声をかける。
「なんだ?」
「剣、貸してもらえないでしょうか?持って来てないんで」
「なんだと?」
「庶民の帯刀は禁止されてるじゃないですか?」
「合格者のみ認められてるはずだ」
「家が遠くて取りにいけなかったんですよ」
「ふむ、・・・それなら仕方ないか。誰か、持って来てやれなるべく軽いヤツをな」
『ははははは』
軽い笑い声がおこる。
「誰か言ってやれ、剣を貸すまでも無いってな」
どこからとも無くそんな声が上がる。
「どんな内容でも暴言は聞き捨てならないな、次言ったら不合格にしてやろうか?」
その言葉に反応したのは、アルフではなく試験官だった。
「な・・・」
「騎士を目指すならそれ相応の精神力も身につけなければならないし、王国お抱えの騎士ともなれば礼儀作法も一流でなくてはならん」
「要は誰にでも失礼の無いようにってことね」
アルフが口をはさむ。
「そういうことだ、相手が子供でもな」
試験官が目ざとくアルフを見る。
「これを使え」
「これ短剣じゃん・・・」
「子供のお前にはちょうどいいだろ」
「まあいいけどさ・・・よっと」
アルフは鞘から抜くと構えの姿勢をとる。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
「・・・・合格だ」
少しの沈黙の後、重苦しく試験官が口を開く。
「ほいありがと」
『あんなガキが・・・』
『本当か・・・』
会場が再びどよめく。
「この剣しばらく借りてていい?」
「・・・・欲しけりゃくれてやる」
「まいどー♪」
「この組はこいつとエドガー以外不合格」
『うそだろ・・・』
『あの試験官あてになるのかよ』
「ふざけんな!」
観覧席から声があがり男が降りてきた。
「他の連中はともかく、そんなガキが合格ってのはどういうことだ!」
試験官につっかかっていく。その男の後ろに何人かが続く。
「そのガキ・・・子供がお前より実力も素質も備わっているからだ」
「そういうことー」
「ふざけんな!」
「ふざけてないよね?」
「うむ、ふざけてなどいない」
「ふざけてなどいないな」
アルフと試験官、それにエドガーも含めて同じ台詞。
「ガキがなめるんじゃねえ!!」
アルフに拳をふりあげる不合格者。
「う・・・」
その瞬間、一筋の剣先がその男に首元に伸びていた。
アルフの剣である。もう数mm伸びていればその男の声帯が、さらに1,2cm伸びていれば命が絶たれていたであろう。
少なからずともこの場にいるものには、その実力が伝わったようだ。
「この剣の切れ味を試してみてもよかったかな」
アルフはいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「果物くらいなら綺麗に切れるだろうさ・・・・不満のあるものは私に言え」
最初はアルフに、そのあと観覧席に向かって言い放つ。
「この子を殺しても貴様らの不合格はかわらんしこの子の合格もかわらん」
その言葉を最後に、不合格者は観覧席へと戻った。
「それでは合格者は1列に並べ、次の審査に移る」
現在、残っている人数は22名。いずれも騎士団長に認められた(構えを見られただけだが)腕利きだ。
「それでは最後の試験を開始する、こちらが用意した現役騎士団員に一太刀でも浴びせられたら合格だ」
「一気にわかりやすくなったなぁ」
「最後はやはり実力で決めると、そういうことだろう」
騎士の先鋭と思われる人間が10人ほど出てくる。
「この10人に私が加わる、魔法の使用も許可しよう。一太刀と言っても、騎士達に何かしら認められたら合格もありうる、出来うる限り全力を尽くせ」



「エドガーさんはもう合格ですか?」
試験を終えたシールがエドガーの横に立つ。
「ああ、相手の剣を跳ね飛ばした」
「相手を制しての勝利ですか、実に騎士らしいですね。うん」
腕を組んで、何故か満足そうにうなずくシール。
「そういうお前はどうなんだ?不合格になるような腕ではないと見ていたが・・・」
「はい、なんとか合格できました」
本当にやっとの合格だったらしく、衣服や鎧には真新しい剣圧のキズが至る所に出来ている。
「やはり本物の騎士はちがいますね!私程度の実力ではついていくのが精一杯でした」
「実戦経験の差だろう、お前は対人経験がほとんどないんだろう?」
「そんなことまでわかっちゃいますか?まだまだ私も未熟だなぁ」
「・・・それよりも、あいつだ」
その視線の先には、騎士と対峙する小さい影。アルフである。
「あの騎士、それなりの実力者だな。あの短剣では間合いに入るのも大変だろう」
「ええ、彼は兄の友人の中でも尊敬できる方です。何度か手ほどきを受けた事もありますが・・・」
「・・・・」
「・・・・・・・・」
その両者の間には沈黙が流れていた。
キン!
少し離れてみていたシールさえも息を飲み言葉を失う攻防だ。
アルフが体を少し動かすたびに、金属音と火花が発生。
アルフが前に出ようとすると、横薙ぎの一閃がアルフを襲う!
「・・・チッ」
舌打ち、アルフは相手の剣から心理を読み取り苛立った。
「・・・子供相手に本気はだせないってか・・・」
いかに試験とはいえ、その騎士は子供相手に対応を困っていた。
むろん、アルフにもある程度の実力があるのは感じている。
しかし相手はリーチの短い獲物、さらに体格の差もある。どうしても本気で相手にするっていうことが出来ずに困っていた。
「一太刀浴びせるってのは難しそうだな」
アルフがうめく。
アルフが懐の飛び込むと、一撃を受け流し半身下がる。だからといって相手側からは積極的に攻撃される事もないので進展が無い。
観念したようにアルフが後方へ跳ね、距離をとる。
「魔法かね?少年」
距離をとったのは魔法を発動させるため、騎士はそう思つつもそれを防ごうとはしない。
「・・・・精霊、開放!!」
アルフの肩の少し上に、黒い光の珠が浮かび上がる。
「黒い精霊・・・ならば私も出さねばなるまいて」
騎士も肩の上に同じように呪文を唱え、青い光の珠を出現させる。
アルフが地面を蹴る!一気に距離を詰めると短剣を閃かせる!
その剣を真正面から受け止める。
「呪文も無しでつっこむか!こけおどしなら通用せんぞ!」
互いの剣が合わさった状態、力の攻めぎ合いが行われていた。
「・・・剣影」
ぽつり、とアルフが呟く。その瞬間にアルフの剣が黒い光で覆われた。
キン!!
アルフは相手の剣を折っていた。いや、剣を切ったのだ。
「なんと・・・」
「まだやる?」
アルフがにっと笑みを浮かべながら聞いてくる。
「いや、合格だ。まさか呪文無しで魔法を使うとは・・・」
あっけにとられたように、剣の切れ口を眺める。
「もっとちゃんと相手してくれてたら剣で勝負がついたのに」
「実力があるのはわかってはいたんだがなぁ、どうにも子供を相手にするのはなぁ」
「まぁ合格できればなんでもいいや」
そういうとアルフは魔化された剣を軽く振る、剣が元の銀光の輝きに戻る。
「このあと、軽く形式めいた任命式を行うが・・・・」
その騎士がアルフを眺める。
「・・・お前にはそれなりの洋服なり制服を貸してやらないといけないようだな」
この国の象徴たる騎士の任命式だ、しかるべき人が集まるのだろう。
庶民の、しかもあまり裕福ではないアルフの格好はあまりにもぞんざいだ。
「私の古い服をお貸ししましょう、家もすぐ近くですから」
シールが口を挟んできた。
「まあ貸してくれるならなんでもいいけど・・・」
「それじゃあ決まりですね、しばらく審査も終わらなそうだし・・・」
「んじゃよろしく、兄ちゃん」




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